« 2004年08月 | メイン | 2004年10月 »

2004年09月20日

【本】寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田寅彦随筆集 第一巻
[著者]寺田寅彦
[編者]小宮豊隆
[出版]岩波文庫 緑37-1 P296 \600 初版1947/2 改版(28刷)1963/10
[入手]新刊 87刷2003/2
[内容](カバーより)
 寺田寅彦(1878-1935)の随筆は芸術感覚と科学精神の希有な結合から生まれ、それらが
 みごとな調和をたもっている。しかも主題が人生であれ自然であれ、その語り口からはい
 つも暖かい人間味が伝わってくる。寅彦を知ること深い小宮豊隆が選び五冊に編んだ。

[感想]
 良かった!!
 上記の内容を繰り返すだけになっちゃいますが、素晴らしい科学と芸術の調和。
 理科系人間でもここまでの文学性を獲得し得るのかと感心至極。
 個人的にやぁ辿り着きたい理想の文章といっても過言でないかも。
 
 随筆ってのは、今まで箸休め的に読むことが多かったんですが、
 この人のはメインディッシュでしたねぇ、満腹、満腹。
 
 この間2巻を古本屋でみつけたので買ってきました。
 
 ちなみに著作権は切れているの、青空文庫でいろいろ読めます。
 興味のある方はどうぞ。
 青空文庫(寺田寅彦作品リスト)

[評価]
《俺》☆☆☆★
《薦》☆☆☆

[引用](P118 「病室の花」より)
 三週間余り入院している間に自分の周囲にも内部にもいろいろの出来事が起こった。いろいろ
の書物を読んでいろいろの事も考えた。いろいろの人が来ていろいろの光や影を自分の心の奥に
投げ入れた。しかしそれについては別に何事も書き残しておくまいと思う。今こうしてただ病室
をにぎわしてくれた花の事だけを書いてみると入院中の自分の生活のあらゆるものがこれで尽く
されたような気がする。人が見たらなんでもないこの貧しい記録も自分にとってはあらゆる忘れ
がたい貴重な経験の総目次になるように思われる。

寺田寅彦随筆集 (第1巻) (岩波文庫)

投稿者 niimiya : 00:05 | コメント (0) | トラックバック

2004年09月15日

【本】日本の選択9 「ヒトラー」に派遣されたスパイ

日本の選択9 「ヒトラー」に派遣されたスパイ
[編者] NHK取材班
[出版] 角川文庫ん3-11 \480 P234 初(1995/8)絶版
[入手] 古本屋(ナンタマ) ¥220 初版
[内容](カバーより)
 日独防共協定――国際連盟を脱退し、世界の孤児となった日本とナチス・ドイツの同盟。緊迫
 の続く国際外交の舞台裏では、常に何層幾重もの思惑が交差し、権謀術数が行き交う。誰が、ど
 のように仕組んだのか。普段は巧妙に糊塗されたものが、ある時僅かな綻びを見せ、歴史の背
 景が顔を出す。
 ハックもクリビッキーも、そしてゾルゲも、それぞれの信ずるものに導かれ、悲劇の歴史を駆
 け抜けた。

[感想]
 ソ連への牽制として日本との協定を必要としたドイツのために、日独接近の立役者となったドクター・ハック。
 その日独の防共協定の行方を探るべく暗躍したソレンのクリビッキー
 かのゾルゲ同様、彼らも 互いに信念に基づき諜報活動を行い、やがて信じた祖国から背信していく…
 ってな内容ですな。
 
 NHKスペシャルの書籍化なんですが、NHKのドキュメンタリー作成の経緯が垣間見えて面白い
 何かと評判の悪い昨今ですが、取材のフットワークの軽さと、信頼に裏打ちされた取材力の強さは
 なかなか民法には真似の出来ないところだねぇ
 あくまで一次資料を追求する姿勢は立派(当たり前か…^^;)

 歴史となってから振り返ってみると、日独防共協定はやはり世界大戦突入への大きな一里塚だったんだね。
 その舞台裏が上記の二人のスパイを中心に描かれていて面白い。
 
 正規外交ルート(外務省)シカトで、対独協調を推し進める陸軍
 と慎重な海軍、そして真っ向から反対する駐英大使 吉田茂(お!)。
 
 歴史の必然だったのかもしれませんが、この協定を機に日本は破滅を突き進んでしまったのかも知れません。
 
 薄くて読みやすいので、ノンフィクション苦手な人にもお薦め。
 
[評価]
《俺》☆☆☆
《薦》☆☆☆

[引用](P221 スパイたちがたどった道 より)
  日章旗とハーケンクロイツ、ともにおよび腰ではじめた日独防共協定であった。そして
 締結当時は、米英を敵にまわすことになろうとは夢想だにしなかった日独両国であったが、
 ついには国家の破滅にまでいたる。まんさにこれは、ナチス・ドイツと日本の軍部独裁によ
 る、素人外交がもたらした悲劇であった。
 
日本の選択〈9〉「ヒトラー」に派遣されたスパイ (角川書店)
日本の選択〈9〉「ヒトラー」に派遣されたスパイ (角川書店)

投稿者 niimiya : 23:04 | コメント (0) | トラックバック

【本】日本の選択9 「ヒトラー」に派遣されたスパイ

日本の選択9 「ヒトラー」に派遣されたスパイ
[編者] NHK取材班
[出版] 角川文庫ん3-11 \480 P234 初(1995/8)絶版
[入手] 古本屋(ナンタマ) ¥220 初版
[内容](カバーより)
 日独防共協定――国際連盟を脱退し、世界の孤児となった日本とナチス・ドイツの同盟。緊迫
 の続く国際外交の舞台裏では、常に何層幾重もの思惑が交差し、権謀術数が行き交う。誰が、ど
 のように仕組んだのか。普段は巧妙に糊塗されたものが、ある時僅かな綻びを見せ、歴史の背
 景が顔を出す。
 ハックもクリビッキーも、そしてゾルゲも、それぞれの信ずるものに導かれ、悲劇の歴史を駆
 け抜けた。

[感想]
 ソ連への牽制として日本との協定を必要としたドイツのために、日独接近の立役者となったドクター・ハック。
 その日独の防共協定の行方を探るべく暗躍したソレンのクリビッキー
 かのゾルゲ同様、彼らも 互いに信念に基づき諜報活動を行い、やがて信じた祖国から背信していく…
 ってな内容ですな。
 
 NHKスペシャルの書籍化なんですが、NHKのドキュメンタリー作成の経緯が垣間見えて面白い
 何かと評判の悪い昨今ですが、取材のフットワークの軽さと、信頼に裏打ちされた取材力の強さは
 なかなか民法には真似の出来ないところだねぇ
 あくまで一次資料を追求する姿勢は立派(当たり前か…^^;)

 歴史となってから振り返ってみると、日独防共協定はやはり世界大戦突入への大きな一里塚だったんだね。
 その舞台裏が上記の二人のスパイを中心に描かれていて面白い。
 
 正規外交ルート(外務省)シカトで、対独協調を推し進める陸軍
 と慎重な海軍、そして真っ向から反対する駐英大使 吉田茂(お!)。
 
 歴史の必然だったのかもしれませんが、この協定を機に日本は破滅を突き進んでしまったのかも知れません。
 
 薄くて読みやすいので、ノンフィクション苦手な人にもお薦め。
 
[評価]
《俺》☆☆☆
《薦》☆☆☆

[引用](P221 スパイたちがたどった道 より)
  日章旗とハーケンクロイツ、ともにおよび腰ではじめた日独防共協定であった。そして
 締結当時は、米英を敵にまわすことになろうとは夢想だにしなかった日独両国であったが、
 ついには国家の破滅にまでいたる。まんさにこれは、ナチス・ドイツと日本の軍部独裁によ
 る、素人外交がもたらした悲劇であった。
 
日本の選択〈9〉「ヒトラー」に派遣されたスパイ (角川書店)
日本の選択〈9〉「ヒトラー」に派遣されたスパイ (角川書店)

投稿者 niimiya : 23:02 | コメント (0) | トラックバック

2004年09月01日

【本】生ける屍の死 (DEATH OF THE LIVING DEAD)

生ける屍の死 (DEATH OF THE LIVING DEAD)
[著者]山口雅也
[出版]創元推理文庫 \980 P650 初1996/3
[入手]古本屋 \500 12刷(2000/2)
[内容](カバーより)
 ニューイングランドの片田舎で死者が相次いで甦った! この怪現象の中、霊園経営者一族の上に殺人者の魔手が
 伸びる。死んだ筈の人間が生き還ってくる状況下で展開される殺人劇の必然性とは何なのか? 自らも死者となった
 ことを隠しつつ事件を追うパンク探偵グリンは、果たして肉体が崩壊するまでに真相を手に入れることができるか?
 著者会心の長編第一作、全面改稿による待望の文庫化。

■感想
推理小説です…がっ、世紀末なもんで(?)世界各地で死人が生き返っちゃってるって状況下。
そもそも探偵役の主人公からして真っ先に死んじゃってて・・・ ^^;

設定はジョージ・ロメロばりだけど、中身は真っ当な本格トリック謎解き小説。
ラストは関係者(死者含む)集っての名探偵(死人)の犯人当てシーンもあり!

ただ、俺は筋追うだけで、謎とか解いたりしないので、謎やら伏線とかちょっとうるさかったかな…
(そんなヤツが推理小説読むなっつの… ^^;)

でも、まっとうな推理小説好きにはかなり評判いいみたいです。
(何年か前の「このミス」のここ10年の国内1位でした)

ちょっと厚いですが、苦にならない人にはお薦め。

『死』にまつわるウンチクがいっぱい出てくるんですが、
全篇通してスラップスティックな雰囲気が漂っているんで、
全然、辛気くさくなかったっす。
個人的には小栗虫太郎ばりにオドロオドロしてるほうが好みかも

あ、アメリカの葬儀にちょっと詳しくなったぞ。
あっちでは、埋葬する前にエンバーミングっちゅう、死体長持ちさせ術を施して暫く生者とご対面できるようにしておいてから、埋葬(基本的に土葬)するそうな。
国土が広いから、遠くから縁者が来るまで死体を持たせておかなきゃいけなかったんですなぁ

うむうむ。

■評価

《俺》☆☆☆
《薦》☆☆☆

■引用(P616 第32章 生ける屍の死 より)

「死者が次々に蘇るこのおかしな状況の中で、なぜ、犯人は殺人などという無駄なことをした
のか?――俺たちは、こいつをまず考えなきゃならなかったんだ」

生ける屍の死 (創元推理文庫)

投稿者 niimiya : 23:00 | コメント (0) | トラックバック