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2005年02月25日

【本】そして誰もいなくなった

そして誰もいなくなった
[原題]TEN LITTLE NIGGERS
[著者]アガサ・クリスティ
[訳者]清水俊二
[出版]ハヤカワ・ミステリ文庫 HM1-1 P258 \280 初1976/4
[入手]古本屋 初版 \200(ヤケ)
[内容](カバーより)
 それぞれ見も知らぬ、さまざまな職業、年齢、経歴の十人の男女が、U・N・オ
 ーエンと名乗る一人の男からの招待状を手に、デヴォン州沖にあるインディアン
 島へとむかっていた。不気味な、岩だらけの島だった。やがて一行は豪奢な大邸
 宅へとついたが、肝心の招待主は姿を見せず、そのかわりに見事な食卓が待って
 いた。不審に思いながらも十人が食卓についたとき、どこからともなく古い童謡
 がひびいてきた。つづいて、十人の客たちの過去の犯罪を、一人ずつ告発してい
 く不気味な声が……!
 クリスティー、最高の異色作。

[感想]
この間、アガサ・クリスティの文庫(ハヤカワ・ミステリの赤背表紙のやつね)が妙に揃っている古本屋を見つけまして、妙に感動して最初の2冊買ってしまいました。
クリスティは数えるほどしか読んだことないんですが、本作は数少ない既読の一冊で、内容が衝撃的だったせいかガキのころに読んだわりには珍しく犯人もオチも憶えてました。
そんな状態でよんでもなかなか面白いですねぇ。

内容は今更ですが、孤島に取り残された過去に傷を持つ10人が一人ずつ消えていく…というアレです。
わたしゃ、屋敷の見取り図がでてきて「作者から読者に挑戦!」みたいなのより、こういうやつのがいいねぇ。
見立て殺人はそんなに興味を惹かれないけどね。

未読な人には是非おすすめ。
フォロワーの作品読み慣れちゃってると、ちょっと淡白に感じるかもしれませぬが…

ちなみに映画化もされてるんですが、内容が少し小説とは違っていて、「そして誰もいなくな…ってないじゃんよーー!」とつっこみたくなる結末でした。
脚本家が勝手に変えたのかと思ってたら、舞台版のためにクリスティが別の結末をつくって、それが映画化されたってのが本当みたいです(あとがきに書いてあった)。

それにしても原題は「ちび●サンボ」なみに際どいな…(というか今なら完全にアウトか…)

[評価]
《俺》☆☆☆★
《薦》☆☆☆★

新装版↓
そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

投稿者 niimiya : 00:35 | コメント (0) | トラックバック

2005年02月24日

【本】寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田寅彦随筆集 第二巻
[著者]寺田寅彦
[編者]小宮豊隆
[出版]岩波文庫 緑37-2 P304 \400 初版1947/9 改版(22刷)1964/1
[入手]古本屋 \250 46刷 1983/5 

[感想]
 半年前ばかりに読んだ第一巻につづいて第二巻。
 前作、同様、文学と科学の調和といいますか、文系文章と理系文章の理想的な一体化といいましょうか。
 とにかく、理系出身の私にはとかく見習いたいところです。 
   
[評価]
《俺》☆☆☆
《薦》☆☆★

[引用](P91 「子猫」より)
 私は猫に対して感ずるような純粋なあったかい愛情を人間に対していだく事のできないのを残
念に思う。そういう事が可能になるためには私は人間より一段高い存在になる必要があるかもし
れない。それはとてもできそうもないし、かりにそれができたとした時に私はおそらく超人の孤
独と悲哀を感じなければなるまい。凡人の私はやはり子猫でもかわいがって、そして人間は人間
として尊敬し親しみ恐れはばかりあるいは憎むよりほかはないかもしれない。

寺田寅彦随筆集 (第2巻) (岩波文庫)

投稿者 niimiya : 00:33 | コメント (0) | トラックバック

2005年02月21日

【本】磁力と重力の発見 1 古代・中世

磁力と重力の発見 1 古代・中世
[著者]山本義隆
[出版]みすず書房 \2940 P394 初2003/5
[入手]新刊(bk1) 11刷2004/3

[内容](カバーより)
近代物理学成立のキー概念は力、とりわけ万有引力だろう。天体間にはたらく重力を太陽系に組み込むことで、近代物理学は勝利の進軍の第一歩を踏み出した。
ところが、人が直接ものを押し引きするような擬人的な力の表象とちがって、遠隔作用する力は〈発見〉され説明されなくてはならなかった。遠隔力としての重力は実感として認めにくく、ニュートンの当時にも科学のリーダーたちからは厳しく排斥された。むしろ占星術・魔術的思考のほうになじみやすいものだったのである。そして、古来ほとんど唯一顕著な遠隔力の例となってきたのが磁力である。
こうして本書の追跡がはじまる。従来の科学史で見落とされてきた一千年余の、さまざまな言説の競合と技術的実践をたどり、ニュートンとクーロンの登場でこの心躍る前=科学史にひとまず幕がおりるとき、近代自然科学はどうして近代ヨーロッパに生まれたのか、その秘密に手の届く至近距離にまで来ているのに気づくにちがいない。

[感想]
駿台時代の恩師(と勝手に思っている)山本先生の本です。
思えば高校時代にこの先生とファインマンの本に出会ったせいで…じゃなくて、おかげで、物理の道を選んだんですなぁ。
根気とセンスのどっちも欠けていたせいで、学究の道から遠ざかって久しいですが、いまでも物理の道を選んだことは後悔してませんぞ。
大学に女子がすくないくらなんぼのもんぢゃーい (`_´メ)

閑話休題

みすず書房のハードカバーなんて読むのは大学以来ですが、いやはや、実に面白いですは、この本。
久々に知的興奮といっていいような感覚味わいました、脳みその普段使ってないところに久々に血が廻った感じ。

本作は全3巻の第1巻目で、ギリシャ時代から中世ヨーロッパの主に磁力の解釈のされ方に焦点があてて描かれています。
ある程度の教育を詰め込まれた今にしてみれば当然のように思ってますが、子供のころは「磁石が鉄を引き寄せる」って現象はとっても不思議でしたよね。
同じことを賢い先人達も考えて、ありったけの知恵と知識を駆使して、その現象を説明しようとしているのですよ。なかなか皆さんいろんなこと考えてらっしゃって、そこが面白い。

タイトルどおり、「磁力と重力」という遠隔力の発見を主題に書かれてはいますが、科学史の入門書としても最適かもしれない。
科学史の本ってのはとかく、ギリシャ時代を描いたあとはルネッサンまでひとっとびするもんですが(たいして読んだことないくせに断定してます)、この本では従来無進歩とされ割愛されていた、キリスト信仰下の中世も丁寧に光を当てていて、新鮮。

難しそうなテーゼですが、駿台での授業と一緒にわかりやすいです。
文章の論理構造がすっきりしすぎ!
理路整然とはこういうことをいうのだねぇ。
(全共闘世代(っていうか議長だったけど)だけあって(?)ちょっと難しい言葉なども使われたりするんですが、ほとんど前後の文脈から判断できます。)
普段、真逆の文章を書きつづけている身にはちとまぶしすぎましたわい。

理系の諸君にはかなりお薦め。
文系諸兄にはわずかばかりハードルが高い気もしますが、哲学史とか学んだことある人なら、少なくとも1巻はおもしろく読めると思います。

まぁちょっと高いので、買うのは図書館ででも探して味見してからのほうがいいかもしれませんが。

ひさびさに長文かいたら、手が寒い…

[評価]
《俺》☆☆☆☆
《薦》☆☆☆

[引用] (磁気学の始まり-古代ギリシャ P54~)
 古代ギリシャは、遠隔的に作用するように見える磁力を原子論やプラトンのように眼に見えない物質の近接作用に還元するか、それともタレスのように霊的で生命的な働きとみるか(物活論)、その二通りの路線において磁力を説明するという思想をはじめて産み出し、その意味「力の発見」の第一歩を踏み出した。

磁力と重力の発見〈1〉古代・中世

投稿者 niimiya : 00:33 | コメント (0) | トラックバック