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2005年02月21日

【本】磁力と重力の発見 1 古代・中世

磁力と重力の発見 1 古代・中世
[著者]山本義隆
[出版]みすず書房 \2940 P394 初2003/5
[入手]新刊(bk1) 11刷2004/3

[内容](カバーより)
近代物理学成立のキー概念は力、とりわけ万有引力だろう。天体間にはたらく重力を太陽系に組み込むことで、近代物理学は勝利の進軍の第一歩を踏み出した。
ところが、人が直接ものを押し引きするような擬人的な力の表象とちがって、遠隔作用する力は〈発見〉され説明されなくてはならなかった。遠隔力としての重力は実感として認めにくく、ニュートンの当時にも科学のリーダーたちからは厳しく排斥された。むしろ占星術・魔術的思考のほうになじみやすいものだったのである。そして、古来ほとんど唯一顕著な遠隔力の例となってきたのが磁力である。
こうして本書の追跡がはじまる。従来の科学史で見落とされてきた一千年余の、さまざまな言説の競合と技術的実践をたどり、ニュートンとクーロンの登場でこの心躍る前=科学史にひとまず幕がおりるとき、近代自然科学はどうして近代ヨーロッパに生まれたのか、その秘密に手の届く至近距離にまで来ているのに気づくにちがいない。

[感想]
駿台時代の恩師(と勝手に思っている)山本先生の本です。
思えば高校時代にこの先生とファインマンの本に出会ったせいで…じゃなくて、おかげで、物理の道を選んだんですなぁ。
根気とセンスのどっちも欠けていたせいで、学究の道から遠ざかって久しいですが、いまでも物理の道を選んだことは後悔してませんぞ。
大学に女子がすくないくらなんぼのもんぢゃーい (`_´メ)

閑話休題

みすず書房のハードカバーなんて読むのは大学以来ですが、いやはや、実に面白いですは、この本。
久々に知的興奮といっていいような感覚味わいました、脳みその普段使ってないところに久々に血が廻った感じ。

本作は全3巻の第1巻目で、ギリシャ時代から中世ヨーロッパの主に磁力の解釈のされ方に焦点があてて描かれています。
ある程度の教育を詰め込まれた今にしてみれば当然のように思ってますが、子供のころは「磁石が鉄を引き寄せる」って現象はとっても不思議でしたよね。
同じことを賢い先人達も考えて、ありったけの知恵と知識を駆使して、その現象を説明しようとしているのですよ。なかなか皆さんいろんなこと考えてらっしゃって、そこが面白い。

タイトルどおり、「磁力と重力」という遠隔力の発見を主題に書かれてはいますが、科学史の入門書としても最適かもしれない。
科学史の本ってのはとかく、ギリシャ時代を描いたあとはルネッサンまでひとっとびするもんですが(たいして読んだことないくせに断定してます)、この本では従来無進歩とされ割愛されていた、キリスト信仰下の中世も丁寧に光を当てていて、新鮮。

難しそうなテーゼですが、駿台での授業と一緒にわかりやすいです。
文章の論理構造がすっきりしすぎ!
理路整然とはこういうことをいうのだねぇ。
(全共闘世代(っていうか議長だったけど)だけあって(?)ちょっと難しい言葉なども使われたりするんですが、ほとんど前後の文脈から判断できます。)
普段、真逆の文章を書きつづけている身にはちとまぶしすぎましたわい。

理系の諸君にはかなりお薦め。
文系諸兄にはわずかばかりハードルが高い気もしますが、哲学史とか学んだことある人なら、少なくとも1巻はおもしろく読めると思います。

まぁちょっと高いので、買うのは図書館ででも探して味見してからのほうがいいかもしれませんが。

ひさびさに長文かいたら、手が寒い…

[評価]
《俺》☆☆☆☆
《薦》☆☆☆

[引用] (磁気学の始まり-古代ギリシャ P54~)
 古代ギリシャは、遠隔的に作用するように見える磁力を原子論やプラトンのように眼に見えない物質の近接作用に還元するか、それともタレスのように霊的で生命的な働きとみるか(物活論)、その二通りの路線において磁力を説明するという思想をはじめて産み出し、その意味「力の発見」の第一歩を踏み出した。

磁力と重力の発見〈1〉古代・中世

投稿者 niimiya : 2005年02月21日 00:33

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