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2003年05月23日

【本】十二支考(下)

十二支考(下)
著 南方熊楠
出 岩波文庫 青 139-2 \760 P397

青空文庫「南方熊楠」
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person93.html#sakuhin_list_1

■感想
いやーついに読み終わりましたよ。
読み始めたのが、ちょうど去年の今ごろなんで、まるっと一年かかりました…
(途中、本がどっかいってた時期もあったりしましたが)
文庫1冊読むのにこんなにかかったのは、下の引用文を見てもらえればわかると思うけど、
かなり癖のある文章なんですわい。
ま、このとっつきにい文章がだんだん中毒になってきたりもするんですが…

内容は十二支にまつわる、民俗・伝説などを古今東西から紹介しまくるというものです。
ためしに一章読んだら、熊楠のすごさがわかるはず。
なにしろ、情報量がものすごいんだわ。
この本の一頁を切り取って、そこらの雑学本とバネ秤の両皿にそれぞれのせたら、そのままつりあいそうな感じ。
碩学とはこういうことをいうもんかね。

ちなみに上巻を読んだのは高校三年のころ(最後まで読んだかかなり怪しいけど…(^_^;))だから、
全巻読破するのに、十二支ひとまわりかかってしまった…

当時ほどは、難解さをあまり感じなかったとこを、みると少しは読解力成長してるのかもね。
(読む速さはガタ落ちですが)

非常におもしろいエピソードてんこもりですが、おしむらくはもうすでにほとんど忘れてしまったので、
あまり披露することはなさそうです…(-_-;)

おもしろいはおもしろいんですが、何度もいうようにかなり読みにくいです。
(それでも新仮名になって、ルビも多用されてるのでだいぶましですが)
なもんで、あまりお奨めしません…<(_ _)>

■評価
評価  ☆☆☆★
お奨め ☆★

■引用(P7 「羊に関する民俗と伝説」 より)

 一九〇三年板アボットの『マセドニア民俗記』に言う。カヴァラ町の東の浜を少し離れて色
殊に白き処あり、黄を帯びた細い砂で、もと塩池の底だったが、日光に水を乾し尽されてかく
なったらしい。昔美なる白綿羊を多く持った牧夫あり、何か仔細あってその羊一疋を神に牲
(にえ)すべしと誓いながら然(しか)せず、神これを嗔(いか)って大波を起し牧夫も羊も
捲き込んでしまた。爾来そこ常に白く、かの羊群は羊毛様の白き小波と化って今も現わる。
羊波(プロパタ)と名づくと。これに限らず曠野に無数の羊が草を食いながら起伏進退するを
遠望すると、糞蛆の群行するにも似れば、それよりも一層よく海上の白波に似居る。近頃何と
かいう外人が海を洋といたり、水盛んなる貌を洋々といったりする洋の字は、件の理由で羊と
水の二字より合成さると釈いたはもっともらしく聞える。しかし王荊公が波はすなわち水の皮
と牽強(こじつけ)た時、東坡がしからば滑とは水の骨でござるかと遣り込めた例もあれば、
字説毎(つね)にたやすく信ずべきにあらずだ。

十二支考〈下〉 (岩波文庫)

投稿者 niimiya : 22:17 | コメント (0) | トラックバック

2003年05月20日

【本】ほらふき男爵の冒険

ほらふき男爵の冒険
編 ビュルガー
訳 新井皓士
出 岩波文庫 赤422-1 P240 ¥350 (絶版)

■感想
ご存知、実在したミュンヒハウゼン男爵のちょいっとばかり脚色された冒険譚。
子供の頃のジュビナイルで読んで、読んだつもりになってたけど、全然違うね。

べらぼうに面白い!

もともとの話の面白さもさることながらですなァ。
巨匠ギュスターヴ・ドレーの手による豊富な挿絵に、思わず声に出して読みたくなる軽妙な訳文!
ワガハイ、この場を借りまして、岩波文庫のお歴々に再版を強く働きかけたい所存であります。

■評価
評価  ☆☆☆☆
お奨め ☆☆☆

■引用 P42(ミュンヒハウゼン自男爵身の話)から

(狩の途中、銃の手入れで、着火用の燧石を銃からはずしていた男爵、折しもそこを熊におそわれ、
慌てて木の上に、しかし、ナイフを刃を木の下に落としてしまい、燧石が取り付けられない。
という場面)

そのとき遂にワガハイは、奇抜かつ目出度きひとつのアイデアに逢着したのであります。大いなる
不安あるとき必ずや大量に溜まりくる例のお水ですな、あれをわがナイフの柄頭にぴたりと当たる
よう方向を定め、一条ワガハイは放射した。折しもすさまじい寒気であったからして、水はたちま
ち凍りつき、瞬き二つ三つするうち、ナイフの上に氷がニョキニョキ伸びて、樹の一番下の大枝ま
で達したもんだ。そこでワガハイ、ひょろしと成長したる柄をつかみ、易々と、とはいえそれだけ
一層慎重にです、わがナイフをひきあげた。こいつを使ってワガハイが燧石をねじで装着した、と
思う間もなく、熊公が上に登ってきたのでありました。「まっこと」、ワガハイは思ったね、「タ
イミングをこうもうまく合わすには、熊公なみの分別はせにゃならんわい。」そこでワガハイ、大
粒霰弾を大判振舞い、褐色の親方を懇ろにお出迎えしたので、大将、木登りを永久に忘却したもう
たのであります。

ほらふき男爵の冒険 (岩波文庫)

投稿者 niimiya : 22:15 | コメント (0) | トラックバック

2003年05月12日

【本】日蝕

日蝕
著 平野啓一郎
出 新潮文庫 P204 \400

■感想
なんか感想かきにくい本よんじゃったなぁ…
最年少芥川賞受賞作らしいけど…
「だからなに?」とかいっちゃだめなんかなぁ

文章語を多用しているわりには、難解ではなくあっというまに読み終わってしまいます。
これが現役大学生が書いたのかと思うと、舌をまく程の文章ではありますが、
ルビの多用と、でかいフォントと行間の広さのせいかどうも安っぽい。
この手の本はもっと文字をギュッとつめこんで、読みにくくして欲しかった…
(まぁルビ以外は著者の責任ではないのかもしれんけど)

神学とかキリスト教史に興味がある人は読んでみてもいいかも。

余談、著者は「三島由紀夫の再来」と評されているらしいけど…
だったら芥川賞じゃなくて、三島賞あげりゃいいのにな。
なかったけ?そんなの。

■評価
評価  ☆☆★
お奨め ☆☆

日蝕 (新潮文庫)

投稿者 niimiya : 22:13 | コメント (0) | トラックバック