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2004年07月18日
【本】河童・或阿呆の一生
河童・或阿呆の一生
[著者]芥川龍之介
[出版]新潮文庫 \100 P198 初版1968/12
[入手]古本 \100 八刷1972/6
[内容]珍妙な河童社会を通して自身の問題を切実にさらした「河童」、自らの芸術と生涯を凝縮した「或阿呆の一生」等、最晩年の傑作6編
[初出]
・大導寺信輔の半生 1925/1 『中央公論』
・玄鶴山房 1927/1~2 『中央公論』
・蜃気楼 1927/3 『婦人公論』
・河童 1927/3 『改造』
・或阿呆の一生 1927/10 『改造』(死後発表)
・歯車 1927/10 『文芸春秋』(死後発表)
[感想]
中学とか高校の頃って専らSFやらスパイ小説とかばっか読んでて、
国語の教科書に出てくるような方々は食わず嫌いしてたんですが、
そんななかでも芥川は比較的親しみやすかった方で、わりと当時も読んでました。
ただ、『河童』とか『或阿呆』はねぇ、なんか自殺直前の作品だけに、妙に暗そうで読む気はしなかったなぁ…
今回は古本屋で100円で売ってたのを何かの縁として読んでみたわけです。
まぁたしかに暗いっちゃぁ暗くて、特に『歯車』なんぞ、遺書に近いものがあるんだけど、つまらないかというと、そうでもない。
『或阿呆~』はスタイリッシュにシニカル(??)でかなり気に入りました。
「信じる者は救われる」ってことが逆説的にわかるなぁ…
そういえば学生時代に先輩が「河童はSFだぜ」って言ってたのを思い出した。
[評価]《俺》☆☆☆
《薦》☆☆
[引用](P155 『或阿呆の一生』より)
彼はすっかり疲れ切った揚句、ふとラディゲの臨終の言葉を読み、もう一度神々の笑い声を感 じた。それは「神の兵卒たちは己をつかまえに来る」と云う言葉だった。彼は彼の迷信や彼の感 傷主義と闘おうとした。しかしどう云う闘いも肉体的に彼には不可能だった。「世紀末の悪鬼」は実際彼を虐んでいるのに違いなかった。彼は神を力にした中世紀の人々に羨しさを感じた。しかし神を信ずることは――神の愛を信ずることは到底彼には出来なかった。あのコクトオさえ信じた神を!
投稿者 niimiya : 2004年07月18日 22:50
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