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2009年01月17日

【本】タウ・ゼロ

タウ・ゼロ
原題:TAU ZERO
著者:ポール・アンダース(Pail Anderson)
訳者:浅倉久志
装画:Dave Archer/Edgerly Associates
出版:創元SF文庫 SF ア 2 5 P365 ¥580 
版数:1992/2
ISBN:4-488-63805-8
初出:1970年アメリカ
入手:BOOK OFF ¥100
読んだ日:2009/1/7

■内容(カバーより)
50人の男女を乗せ、32光年彼方のおとめ座ベータ星第三惑星をめざして飛びたった恒星船。だが不測の事態が発生する。生まれたばかりの小星雲と衝突s、その衝撃で場サード・エンジンの減速システムが破壊されたのだ!亜光速の船を止めることもできず、彼らはもはや大宇宙を果てしなく飛び続けるしkないのだろうか……?現代SF史上に一時代を画したハードSFの金字塔登場!

■感想
この本は私が大学にはいるかはいらないかのころの日本で翻訳が出て、当時、SF好きの間ではかなり話題になったと記憶しています。
その頃は、新刊で本買う余裕もあまりなかったんで、気になりつつも古本屋で出回ってきたら読もうと思いつつ、早幾とせ。
数年前に古本屋で出会ったときは、めっきりSF読まなくなってしまってたんで、買ったものの積ん読棚にほおりこみっぱなしになってました。
しかし、先日、野田元帥の「スペースオペラの読み方」読んだら、またぞろSF熱が蘇ってきたもんで、引っ張り出し的と読んでみました。
いやはや、読みだしてみたら、これがめっぽう面白い。
出張先のホテルで明日も仕事なのに夜更かしして読み切ってしまいましたよ。

簡単にいうと、恒星間宇宙船の減速システムが故障して、限りなく加速してしまうお話です。
一見そりゃもうおしまいだろって気がしますが、主人公がへこたれない男でして、失敗しても次から次に解決策をおもいつくんですな、そのアイデアがまさにセンス・オブ・ワンダー。
こりゃぁ、SFでしか味わえない醍醐味ですなぁ。

タイトルのタウ・ゼロの意味ですが、タウ(τ)ってのは、相対性理論の運動方程式に出てくる因子で、ある物体(宇宙船)が速度Vで移動してるときに、τはルート[1-(v^2/c^2)]になるんですな(cは光速)。
で、物体の速度Vが光速に近づいていくとτは0に近づくわけです。
まぁ質量のある物質は光速にはなれないので、実際はτはゼロにはならないのですが、限りなくどこまでもそれに近づいていくと。
で、τがゼロにちかづいてくと、なにがおこるかというと、宇宙船の外の系(地球)からみると、宇宙船の質量はどんどん大きくなっていって、船内の時間はどんどんゆっくりになっていくんですなぁ(いわゆるウラシマ効果)。
なもんで加速がすすんで、光速に近づけば近づくほど、外の世界の時間の流れがどんどん早くなってしまうというところがこの小説の胆です。
船内で何気なくすごす1日、1時間、1分、1秒がやがて地球の1日、1月、1年、10年…となっていく、この切なさ。
まさにSFでなければ描けない世界です。

日本で出版されたがのが1992年なんで、その数年前くらいに書かれたのかと思ってたんですが、アメリカでは1970年に出版されているんですね。
翻訳が新しいせいもあると思いますが、恒星間宇宙せんの原理描写などもふくめて全然古い感じがしないのはたいしたもんです。
ただ、背景に描かれる宇宙論が膨張/収縮宇宙論(っていうのかな)なんですよね。
そんなわけで、後半は現在支持されているビッグバン宇宙論とは相容れない展開なんですが、それでもこの作品の魅力はそこなわれていないです。(このあたりは巻末の役者による解説に詳しいです)
その時代にしか生み出し得なかった名作中の名作だと思います。

未読でしたら、ぜひ一読を。

■評価(満点は☆☆☆☆、普通は☆☆、★は1/2)
《俺》☆☆☆☆
《薦》☆☆☆☆

タウ・ゼロ (創元SF文庫)

投稿者 niimiya : 2009年01月17日 23:01

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