« はてさて週末の天気はどうでしょうか | メイン | 日系のみ »
2007年01月25日
【本】六の宮の姫君 / 北村薫
六の宮の姫君
著者:北村薫
表紙:(イラスト)高野文子、(デザイン)小倉敏夫
解説:佐藤夕子
出版:創元推理文庫 M-き-3-4 P268 ¥480 初版1999/6 再版1999/7
ISBN:4-488-41304-8
入手:BOOKOFF ¥300
■内容(カバーより)
最終学年を迎えた〈私〉は、卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていくかたわら、出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。《あれは玉突きだね。・・・・・・いや、というよりはキャッチボールだ》――王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、〈私〉の探偵が始まった・・・・・・。
■感想
いやいや、こうきましたか…
日常の些細な謎を解く連作で始まったこのシリーズも、前巻ではついに大きな出来事がおきる長編になりましたが、本巻では事件らしい事件は一切なく、ひたすら芥川龍之介が「六の宮の姫君」という作品を執筆するにいたった動機を「私」がいろいろな本から探る過程が描かれています。
ダヴィンチ・コードなんかに比べりゃはるかに地味なんですが、文献をいろいろ掘り起こすところなんか丁寧に書いてあって、謎解き(ってほどでもないけど)の過程は私にはこっちのほうが面白く感じられました。
「文学」を研究する醍醐味ってのはこういうところにあるんですかねぇ
ちなみに、あとがきによると、この作品のテーマは実際に作者が卒論でとりあげたものだそうな。
うーん、ナイスリサイクル!
芥川の「六の宮の姫君」って未読なんですが、ずいぶん壮絶な話なのね…、タイトルからはなんか西洋のお伽の世界想像してました…
文学謎解きだけじゃなくて、その合間に、いよいよ社会にでようとする「私」の成長もしっかり描かれているので、そっちに興味がある人も一安心。
しかし、芥川と菊池寛ってこんな親しかったんだねぇ
作家同士の交友なんて全然知らんもんで、この二人の関係も初耳でしたよ。
まぁ、たしかに考えてみれば芥川賞も直木賞も菊池寛がつくったわけだし、そんな驚くようなことではないのか…
菊池寛ってまったく興味なかった(失礼・・・)けど、ちょっと興味がわいてきましたよ。
こんど日本に帰って古本屋よることあったら、ちょっと探してみるかな。
まぁ、真珠婦人はちょっと…、あれですが…
(好きな人。読まず嫌いですみません。趣味の問題です)
そういうわけで、普通の推理小説からはだいぶかけはなれていますが、今までのシリーズを順に読んできた人には楽しめるでしょう。
あと本好きだったら、この巻だけでもおもしろいかもしれませね。
ただ、主人公の成長を追う意味では、できればシリーズの最初から読むほうがいいと思いますが。
■評価(満点は☆☆☆☆、普通は☆☆、★は1/2)
《俺》☆☆☆★
《薦》☆☆☆
投稿者 niimiya : 2007年01月25日 22:11
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://niimiya.akatsukinishisu.net/mt3/mt-tb.cgi/671
コメント
こんにちは。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
終戦直後の菊池寛(文藝春秋)もとりあげています。
よかったら、寄ってみてください。
投稿者 kemukemu : 2007年02月05日 21:26
拝見しました。
文藝春秋の戦後直後の菊池寛の文章は、非常に興味深いですね。
投稿者 niimiya : 2007年02月06日 23:47