2007年01月21日
【本】柿の種
柿の種
著者:寺田寅彦
表紙:矢崎芳則
解説:池内了
出版:岩波文庫 緑37-7 P287 ¥600 初版1996/4 18刷2004/5
ISBN:4-00-310377-7
初出:俳句雑誌「渋柿」掲載 大正9年~昭和10年。単行本 小山書店『柿の種』『橡の実』。
入手:古本 ¥320
■内容(カバーより)
日常のなかの不思議を研究した物理学者で,随筆の名手としても知られる寺田寅彦の短文集.大正9年に始まる句誌「渋柿」への連載から病床での口授筆記までを含む176篇.「なるべく心の忙(せわ)しくない,ゆっくりした余裕のある時に,一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」という著者の願いがこめられている.
■収録
自序
短章 その一 (「渋柿」掲載作)
短章 その二
■感想
著者が「渋柿」という俳句雑誌に連載していた小編と晩年の短い随筆をまとめた作品です。
著者の他の随筆より短いですし、それほど難しい話題でもないので、枕のとなりにおいておいて、寝る前にちょっと読むのに最適でした。
また、とっつきやすいので入門篇としても適しているのではないでしょうか?
ただ、寺田寅彦という人物の思想、人となり、そして科学と文学の絶妙な混ざり具合をじっくりと味わうなら、やはり随筆集のほうが好いかなとも思います。
一編が短いこともあり、大正9年から晩年の昭和10年までと比較的長い期間にわたった作品が収録されているので、全体をとおして著者の後半生が伝わってきました。特に大震災後の記述は興味深かったです。また、晩年に近い作品は自分の死や戦争へすすんでいく国家情勢への予感が感じとれ胸を打つものがありました。
著者に興味はあるけど、他の著作にちょっと手をだしにくい人は、まずはこれから読んでみてはいかがでしょうか?
■評価(満点は☆☆☆☆、普通は☆☆、★は1/2)
《俺》☆☆☆
《薦》☆☆☆
■引用(P21より)
気象学者がcirrusと名づける雲がある。
白い羽毛のようなのや、刷毛で引いたようなのがある。
通例券雲(けんうん)と訳されている。
私の子供はそんなことは無視してしまって、勝手にスウスウ雲と命名してしまった。
(大正九年十二月、渋柿)
投稿者 niimiya : 2007年01月21日 01:14
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