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2007年01月14日
【本】秋の花
秋の花
著者:北村薫
表紙:高野文子
解説:北村暁子
出版:創元推理文庫 M-き-3-2 P256 ¥480 初版1997/2 17版2004/4
ISBN:4-488-41303-X
入手:BOOK・OFF ¥300
■内容(カバーより):
絵に描いたような幼なじみの真理子と利恵を過酷な運命が待ち受けていた。ひとりが召され、ひとりは抜け殻と化したように憔悴の度を加えていく。文化祭準備中の事故と処理された女子高生の墜落死――親友を喪った傷心の利恵を案じ、ふたりの先輩である《私》は事件の核心に迫ろうとするが、疑心暗鬼を生ずるばかり。考えあぐねて円紫さんに打ち明けた日、利恵がいなくなった・・・・・・
■感想
前作どおり短編または中篇集だと思って読んでたら長編だった…
しかも、本作ではついに死者が…
人が死ぬなんて推理小説のほとんど必要条件のようなもんで、普通たいして心が動くこともないですが、このシリーズでは、いままで日常の些細な謎を扱ってたので、読者としてもちょっと吃驚です。
しかも、亡くなったのが前作にちょっと仲良さげ出てきてた二人のうち一人としって、登場人物のように「え、あの人が?」と思わされてしまいました。
下種な見方をするとこのあたり実にうまいなぁ。
一見、密室殺人のような設定で、今回は普通の推理小説のようにすすむのかとおもいきや、そこは最後まで読むと、やはり「私と円紫さん」シリーズなんですなぁ
人を亡くす喪失感、そして取り返しのつかない後悔の念(ネタバレのため秘す)が胸を打ちます。
■評価(満点は☆☆☆☆、普通は☆☆、★は1/2)
《俺》☆☆☆★
《薦》☆☆☆
■引用 P244より
「私達って、そんなにもろいのでしょうか」
円紫さんは回しかけたエンジンキーを停めて、私を見た。深い目だった。そして私のために真剣に言葉を探してくれている目だった。
「もろいです。しかし、その私達が、今は生きているということが大事なのではありませんか。百年生きようと千年生きようと、結局持つのは今という一つの時の連続です。もろさを知るからこそ、手の中から擦り抜けそうな、その今をつかまえて、何かをしようと思い、何者かでありたいと願い、また何かを残せるのでしょう」
「でも――」と私はいっていた。「明日輝くような何かをしようと思った、その明日が消えてしまったら、どうなのですか。その人の《生きた》ということはどこに残るのです」
円紫さんは、大切なものを運ぶように、静かに、ゆっくりと答えた。
「それでも、その意思が残ると思います。(後略)」
投稿者 niimiya : 2007年01月14日 23:18
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