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2008年06月21日

台湾のこと 日本のこと について考えた

Blogには政治的な意見は書かないようにしていたんですが
今回の尖閣諸島沖の漁船沈没事故について
台湾に住む一日本人として、ちょっと思うところを書き散らかしてみました…
われながら支離滅裂ですが、暇な人は読んでみてくださいな。

■台北市内のひとびと反応
台北では発生直後から今に至るまで実に平穏でした。
反日デモなんざ影も形もみかけませんでしたし。
こちらが日本人だとわかっても、街の人の対応はまったくもっていつもどおり。
食べ物やのおじさんはカタコトで「ありあとー」って言ってくれるし、バーの新米バーテンさんは今、日本語勉強中なんでちょっと教えてくださいといってくるし。
台湾人スタッフの一人から「あれは私たちの島よ」って冗談っぽくいわれたりもしたけど、そういう話ができるってことは逆説的に深刻に思ってるわけじゃないってことだと感じました。
ただ、メディア(新聞・テレビ)は事故当初はかなり感情的かつ煽動的な報道をくりかえしてましたね。
それも馬総統の日本の態度に一定の評価をした談話が出てから、急に沈静化しましたね。

■台湾って親日なの反日なの
日本からきた旅行者とたまに話することがあると、

「台湾の人たちはみんな日本のことが好きで、戦前・戦中の日本支配もいいものをたくさん残してくれて感謝している。」

と思っている人が結構いるなぁと感じます。

たしかにそういう風に考えている人もいます。はい。

バスで乗り合わせた元日本兵のおじいさんから流暢な日本語で当時の思い出や、日本への熱い思いや、日本が去ったあとのつらい記憶をきかせてもらったこともありますし。

飲み屋のおじさんやタクシーの運ちゃんから、片言の日本語と台湾語で、日本への褒め言葉と国民党への悪口をさんざん聞かされたこともあります(台湾語まったくわからんかったですが…)。
228事件やその後に続く国民党の白色テロル時代の忌まわしい記憶が残っている人は、その反動もあって日本へのシンパシーは強いのかもしれません。

でも、そうでない人も当然いて

今回の騒動で大騒ぎしていた一部の民族主義の人やら、職業活動家の方々は置いておいたとしても…

やはり国民党とともに大陸からわたってきた人やその利権にあずかれた人たちは、心情的に中国に近くて、いきおい日本にはあまりいい感情をもっていない人もいるようです(外省人=反日・内省人=親日という安易な分け方には組したくないですが…)。

また、たとえ現在の日本にいい感情をもっている人たちでも、戦前の日本支配を全肯定している人はそれほどいないのじゃないかなと感じています。

少なくとも、民主化前の国民党の独裁時代の教育を受けている人達は過去の日本支配に対しては否定的な人が多いです(たぶん)。
若い人だと、支配自体は遺憾だけど、結果として正の遺産(教育やインフラの充実)も残った、と考えている人が多いのかなぁ

実際、台湾はさまざまな異なる背景をもった集団が入り混じった社会です。
原住民、ホーロー人、客家人、国民党とともに中国全土の様々な省からきた人、そしてその2世や3世、アメリカ・カナダ・日本などで生まれて戻ってきた人達、台湾で育ってそれらの国へ留学してた人などなどなどなど…それぞれの立場で考え方も変わってきますし、世代によってもこれまた変わってきます。(私はこの多様性こそ台湾の宝だと思ってます。)

西門町(こっちの若者の町です)などには、「歴史とか政治とかわかんないけど~、日本のファションとか浜崎歩の歌は好き~」なんて若い子もいるかもしれない(推測100% ^^;)

ただ言える事は、それぞれの人がどんな考えでいるにせよ、大多数の人は親切で、私自身、台北に住んでいて日本人ということで、親しげに話かけてもらえることはあっても、不愉快な目にあったことは一度もないです。(今回の騒動中でも)

また、日本製品や日本のファッションなども街中にはあふれていますし(ちょっと高いけど)、ハリウッド映画とならんで、日本の映画もしょっちゅう上映してます。
第二外国語の授業がある高校も多いのですが、そこで一番選択されているのも日本語です。
若い人たちの間では日本への親近感は大きいなぁと感じます。

なもんで、今回の件で、日本の人に「台湾も反日かぁ」と思われると悲しい…

■尖閣諸島について
そもそも、今回の事件の舞台となった尖閣諸島についてですが、私は日本の領土だとがっちり思っています。
できれば「歴史的にみても、国際法にみても」とかきたいところだが、歴史も詳しくないし、国際法のことなんてこれっぽっちも知らないので自制。

まぁ、日本(外務省)の見解はちゃんと読んだわりに、台湾の言い分はニュースで流し見した程度なんで偏った見方かもしれませんが、過去も現在も島の上で実際に活動実態があったのが日本だけならそりゃ日本なんじゃないっすか??
これ、シロート考えすぎますか???

なもんで

「日本の領海に勝手に入ってきて、事故ったからって文句いうのはおかしいぞぉ」
「北海道の漁船なんて、ロシアの領海で銃撃されて殺されたりしてるんだぞ~~」
「日本も謝る必要なし!!弱腰外交反対~!」

と日本でいっている人の気持ちもよくわかる

わかるがっ

がっ

ちょっと、台湾の人の思いを勝手に想像していわせてくださいな(台湾政府を代弁する気はねっすよ)。
まぁ想像なんで、台湾人から「おいおい違うよ」って言われたらそれまでですが…^^;

まず、地図をみると尖閣諸島って本当に台湾の目と鼻の先なんっすよね、対して日本ははる~~か遠くにある印象。
実際のところは沖縄県の八重山諸島のがもっと近くなんで、そりゃ違うよといいたんですが、こっちの人の感覚で「日本」の場所というとやっぱり本州をイメージしてしまうと思うのですよね。

そんなわけで台湾の漁師の人からしてみても実感として「おらが海」って思いはあると思うのですよ。
実際に海の上に国境が引いてあるわけでもないですしね。
そして日々のたつきもたてないといけないとなると尖閣諸島の近くまできてしまうこともあるわけですよ。
北海道の漁師さんたちが命懸けてでも、ロシアの領海にはいってしまうことと一緒だと思うのですよね。
まぁ生活していかなきゃいけないのは日本の(沖縄の)漁師の人もまったく同じなので、領海侵入を肯定するつもりはまったくねっすけど。

そして、台湾の一般の人が怒ってたのは、海上保安庁の船が接近方法を誤ってぶつかったにもかかわらず、当初は漁船側に一方的に非があるようなことをいってたことに対してなんですよね。

台湾側の立場に同意することはないけどそのあたりを日本の人には忖度してほしい。

それに、台湾人みんながみんなブーイングしてたわけじゃないっすよ。
実際今回の事件の直後の新聞が過激にあおってたときでも、日本はそんなに悪くないって人は40%以上と、日本が悪いって人の数とたいしてかわらなかったですし。

ちなみに今回日本側が謝罪したことに対して日本内での批判もいろいろあるみたいですけど、私は非常に評価しています。

自分たちにも非があるとおもったら謝る。
それは美徳とされていたことだったじゃないですか。
今回も少し遅れたにしろちゃんと謝ったことは、こちらでも非常に評価されてると思います。

それに日本は人口もGDPも国土の面積も台湾の何倍もあるわけですよ。
そういう相手に頭をさげるってのこそ真の誠実さだと思うのですよ。
(台湾を卑下しているわけではない)
世界的には面子を重視して謝らないことが常識なのかもしれないけれど、日本は違ってもいいじゃない。
少なくとも、台湾はそういう価値観が通じる国ですよ。
(他の周辺の国々に通じるかは・・・・ですが)

私は今回の対応については祖国を本当に誇りに思いましたよ。

そして、今回の事件はひとりも犠牲者がでなかったから本当によかったです。
もし、犠牲者がいたら事態ははるかに深刻になっていたと思います。

今後のことも考えるとやはり漁業協定の早期締結は必要なんじゃないでしょうか。
(不勉強で物申してますが…)

保釣団体など、沈静化しかけたこの問題を再度炎上させたくてしたくてしょうがない人たちもいますし…

国民党政権や馬総統についてもちょっと書こうかと思ってたんですが、いいかげん長くなってきたのと、さっきから呑みだしたビールがちょうどいい感じになってきたので、また今度(←あるのか?)。

では、例によって推敲なして投稿!誤字脱字乱文ひらにご容赦。

投稿者 niimiya : 2008年06月21日 15:20

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コメント

今回の騒動で一番の被害者(?)は
元駐日大使の許さんだなぁ・・・・・
というオチで飲み屋の話は落ち着くんやけどね

投稿者 万三朗 : 2008年06月21日 17:02

実際暮らしてわかる、微妙な台湾の人のアイデンティティ。


日本に帰って、あまりにも一方的な報道に驚き=「台湾において反日感情の高まり」
しかし、今回の問題を聞かれても、一言で説明はつかず。

そんな自分がもどかしくもあり。

ちょっとこのブログには、しびれました。

投稿者 百合子 : 2008年06月21日 23:51

力作、しっかりと読ませていただきました。

やはり現地で見て、肌で感じた情報というのは違いますなぁ。
2年間(だっけ?)の駐在生活の充実ぶりを感じました。
ただ酒飲んでるだけじゃなかったんだね(笑)

このニュース全く知らなかった俺が言うのもなんだけど、日本のマスコミってお粗末だよなぁ。

投稿者 kentaro : 2008年06月22日 06:47

>万さん

彼が男をみせてくれたおかげで「台湾人みんなが反日じゃない」ってわかりやすいメッセージを発信できたのかなぁって思います。
男 いや 漢だねぇ…

しかし、彼のことを台奸(売国奴)って呼んだ。国民党の立委(国会議員)には本当に腹が立つ!!!!!!
どんなに意見が対立して、非難しあってもいいけど。
その言葉はつかっちゃいけねーよ。
奴からは、戦前日本の自由言論を封殺していった、国粋主義の政治化・文化人の臭いがする。
唾棄すべき男じゃ…

>百合子さん
台湾に限ったことじゃないですが、すんでみないとわからないことってありますよ。
特に台湾は歴史背景が複雑ですしね。
私も日本から友達がきたり、帰るたびに説明に窮しちゃってました。
ま、今回いい機会なんで(といっちゃなんですが)、ちょっと自分の考えを整理してみました。
しかし、自分の論理だった文章を構築する能力のなさに脱力…

>Kentaroさん
日本ではあまり報道してなかったみたいっすね。
日本のマスコミは、深く考えもせずに脊髄反射で政府を叩くわりには、周辺国家の問題には妙に政府の意をくんだような報道姿勢がかんじられますな。
でも、こういう領土問題などは、双方のマスコミの反応が合わせ鏡のように反射してエスカレートしていってしまうものだから、日本側の自制した報道もありなのかなぁと思ったりもします。
こっちの報道は本当にひどかった・・・・・・
今回の件に限らず、ぶっちゃけ台湾のマスコミの低俗さにはちょっとあきれてます...
(なかにはしっかりしたのもあるんだろうけど、わしら外国人の目には低俗マスコミのが目立っちゃうのよね...)

投稿者 niimiya : 2008年06月22日 12:33

ほとんどの日本人がこのニュース自体を
知らないんだよ。
その辺が私は悲しかったなぁ。
テレビのニュースでは、現地の日本人にはいつでも帰国できるように呼びかけをしているってやってた。
だから、台湾に遊びにきてる間は、外では日本語しゃべるのやめとこうって思ってたんだけど、そんな危険なことないのね?

投稿者 ちいたん : 2008年06月22日 17:59

お久しぶりです~。
今回の事件については、いろいろ考えました。

台湾の人は、決して反日ではないとは思いましたが、交流協会から、在邦人に注意が出た事とかはニュースで知っていたので、どうなる事かと少々心配してました。
台湾という国の成立の歴史から、考えると、日本の立場は結構複雑ですよね。
さらに、領土問題に関しては、世界各地で、ほとんどのケースで解決の方向性というのは、見えて来ないというのが現実かと。

niimiya兄のブログ、なかなか鋭くて面白く拝見させていただきました~♪
山田のカウンターで、オリオンでも呑みながら、もうちょい突っ込んだ話がしたいものです(笑

投稿者 祐青 : 2008年06月22日 19:55

おひさしぶりー。お元気そうで何よりです。

このニュース、気になっていました!
だんなさんとも「もっとニュースで取り上げられそうなのに、日本のメディアではあんまり取り沙汰されないね。」と不思議がってたのです。
亡くなった方がなくて本当に良かったけれど、国内の事件だったらもっと詳しく取り上げられているはずなのに。
日中・日韓関係のことは考えるきっかけも多いけれど、日本と台湾の関係ってなんとなくその間に隠れてしまってる気がする。
niimiyaくんの日記読んで、日本と台湾の関係って私は殆ど知らない、或いは誤解してたんだなぁと改めて思いました。

投稿者 ビッケ : 2008年06月24日 15:49

> ちいたんさん
どもどもごぶさたしてます。
日本じゃ全然報道してなかったみたいですねぇ
事件中も台北は実に普段どおりでしたよ。
街中で日本語で話してても平気でしたし。
在留協会の通知の件もニュースでみましたけど、大げさな感じは否めなかったです。
家族いる人はまた違った感じかたしてるかもしれませんが…
どうも、「日台関係悪くなっても本当にいいの?」という日本側からのメッセージだったような気もしてます。

>祐青さん
本当、日本と台湾の関係は実に複雑だやね。
台湾の中に日本時代を肯定してくれる人がいるのはうれしいことかもしれないけど。
同じことを日本人(支配してた側の国の人間)がいっちゃいけねーよ とは思います。

ちなみに領土問題ってのは、もう解決させずに
条約・協定などで実運用上の取り決めをしてくのが
現代のスタンダードなんじゃないのかなぁ
全然知らないのにしゃべってますが…

>ビッケさん
おー!
めちゃおひさ~
便りがないのがいい知らせってわけでもないけど。
いままで、あんまり考える機会が少なかったってことはそれだけいい関係だったのかもね。
台湾はねぇ
すんでみないとわからんことだらけだし、すんでみたところでわからんことだらけです。
結局、私が仕事相手や、友人として接する人たちも台湾の中では比較的若くて、高学歴、2~3ヶ国語話せて、留学経験ある人などが断然多いわけでね。
彼/彼女らの意見がすなわち台湾人の総意かというとそうでもなかったり…
まぁいろんな考えをもった人達がいて、それを自由に話せるってのは台湾のとてもすばらしいところだけどね。

やっぱり今回の騒動でも、これが韓国・中国だったら、たとえ「日本悪くないんじゃないの?」ってたとえ心の中でそう思ったとしても、それを表明することは社会的に許されない雰囲気があるのではないかなぁ(旅行でいったことすらないので想像にすぎませんが…)。
その点、台湾では中にはそういう発言をしている人達もいましたからねぇ
メディアは歴史的な経緯で、国民党よりのものが多くて、当初は反日一辺倒のようでしたが…

投稿者 niimiya : 2008年06月25日 00:28

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